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懲りずに再びです。
特殊ですので、注意を読んで平気という方だけスクローズプリーズ。
●ファンタジーパラレル風味
●メトロ皇国と都営帝国で戦争。
●都営帝国が侵略した。
●交流あった平和な時代に浅草と三田、東西、南北は交流があった。浅草と東西はとくに仲よかった。
●細かく設定考えてないです。
●最終戦闘終了後。前回に上げたものの続きです。いちおう続きです。
●こんな結末あってもいいんじゃね?という甘い展開です。
●IAです。裏設定NTですが今回はちらっとも出てきませんNT。
以上、平気な方は続きからどうぞ!
火のはぜる音が大きく聞こえ、三田は顔を上げた。まだ三田のいる部屋までは火の手はきていないが、それも時間の問題だろう。
三田は小さく息を吐き、腕の中にいる身体をそっと抱き締める。浅草の意識はなかったが、まだ息があるのは感じられた。だがそれもいつまでもつかわからない。それほど浅草の傷は深いものだった。
治療の宛てはない。それどころか、三田は火の手の迫る部屋から動こうとはしなかった。
三田自身も怪我を負っていたが、それは理由ではない。普通であれば瀕死の浅草を連れて逃げることも不可能ではなかった。
それでも三田は浅草を抱き締め座り込んだまま動こうとはしなかった。
戦に負け、浅草は自ら責任を取るように死を望んだ。三田はずっと傍にいると誓った通りに、彼の望みをともにしようと思ったのだ。嘘をついて嫌われてまで、自分を生き延びさせようとした浅草の思いに反することは心苦しかったが、それでも三田には浅草を見捨てることなど出来なかった。
ドアの隙間から煙が入ってくることに気づき、三田は目を細める。
無意識に浅草を守るように抱く腕に力を込めた。
これで最期かと思い、せめて浅草がこれ以上苦しむことないようにと心から祈る。
視界が白く染まり出し、軽く咳き込んだ。
不明瞭な世界に、唐突にまばゆい光が煙を切り裂くように立ち上る。
唖然とする三田の目の前で、たちまち光は消え、最後に長身の人物だけが残った。
「新宿……っ!?」
三田は現れた人物の名前を信じられない思いで呼んだ。
現れたのは、数か月も前にメトロ皇国との戦いで死んだと思われていた新宿だった。
「三田! 無事だな!?」
駆け寄ってくる新宿を三田は唖然と見つめる。
「……っ!? 浅草っ!!」
近づいて初めて気づいたのだろう。三田の腕の中で意識を失っている浅草を見るなり新宿の顔色が真っ青になった。
「お前、生きていたのか……っ?」
「三田、話は後だ。すぐに移動する。手遅れになる前に治療しないと!」
「けど、治療って……」
「安全な場所で大江戸が待ってる。そこまで一気に飛ぶ」
「大江戸も生きているのか!?」
同じく行方不明となっていた仲間の名前に、三田は再度驚きの声を上げた。
「話は全部後だ! 落ち着いたらちゃんと話してやる。そんなことより、今は浅草を助けるのが先だっ」
真剣な新宿の瞳を見返すと、三田はひとつ頷いた。
まだ混乱していたが、新宿と大江戸が生きていたことだけは理解した。そして、ふたりが生きていることを知れば、浅草は生きることを諦めないでいてくれるかもしれないと思った。
新宿がふたりの背後に立ち、まるで守るように呪文を唱え出す。
移動の魔法陣が光を放ち出すのを見て、三田はまだ暖かい浅草の身体を抱き締めた。
ただ間に合うようにと祈りながら。
三田は高く澄んだ青空を見上げ、深く溜め息を吐いた。
あの運命の日。ただ死を待つだけだったところを思いがけず新宿に助けられてから、すでに二ヵ月が経っていた。
大江戸の治療のおかげで、浅草は一命を取り留め、三田の怪我もこうして出歩くことが出来る程度には回復していた。
だが。命は取り留めたものの浅草の意識は未だ戻ってはいなかった。
大江戸は懸命に浅草の治療と看護をしてくれている。新宿も原因を探している。
ただひとり何もすることの出来ない三田は、せめてもと食料を採りに行ったり、薪を集めたりしていた。
このまま浅草の意識が戻らなかったらと思うと、ぞっとする。浅草のいない世界でひとり生き残るなど考えたくもない話だ。
浅草の命令に背いて彼の元へ戻った。浅草の望みに反して彼を生かす道を選んだ。
もしかして自分が彼の願いを裏切り続けていたから、浅草は目を覚まさないのだろうか。
「ちっ」
三田は小さく舌打ちをし、仇のように空を睨みつけた。
青く澄んだ空は嫌いではない。ただ幸せだった時を思い出すのが嫌だった。
東西や南北と過ごした日々を。
新宿と大江戸と四人で笑いあっていた日々を。
浅草が、笑顔でいた日々を。
取り戻すことは出来ないが、新しく作っていくことは出来る。
浅草さえ、目を覚ませば。
三田は顔を顰めたまま、川までやってくると、朝仕掛けておいた網を引いた。なかに丸々と太ったマスがかかっているのを見て、少し表情を緩める。
半分ほど薫製にして浅草が目覚めた時に食べさせてやれればと思った。
網を元の位置に仕掛け直し、三田は獲れたばかりのマスを袋に入れると足早に寝泊りしている小屋へと向かった。
「ただいま」
小屋へ入ると三田はマスの入った袋を炊事場へおくと、すぐに浅草の部屋へと向かった。
軽くノックをしてからドアを開ける。
出かける前と変わらず、浅草は目を閉じベッドに横たわっていた。
「三田さん、お帰りなさい」
ずっと浅草についている大江戸が三田を振り仰ぐ。
「おお。新宿は?」
「町の本屋で調べものをしてくると出掛けられました」
「そっか」
新宿がメトロ皇国や都営帝国の兵士らに見つかる危険を犯してまで町へ出てしている調べものが何かは、どちらも口にしない。言わずともわかりきっていることだからだ。
「オレが浅草を見てるから、お前少し休んでこい」
「……わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」
三田の言葉に逆らわずに大江戸が座っていた椅子から立ち上がる。入れ替わりに椅子に座った三田は、ドアへ向こう大江戸を振り返った。
「そうだ。さっきいいマスが獲れたぜ」
「それはよかったです。半分は薫製にして保存しましょうか」
「そうだな。オレもそれがいいと思う」
「わかりました。では」
日常の会話を交わし、大江戸が部屋を出ていく。
三田はドアが閉まるのを見届けると、浅草へと視線を戻した。
命を維持するのに必要最低限の栄養は薬草を煎じたものなどで与えている。だけど、意識が戻らず何ヵ月も眠り続けている浅草は明らかに痩せていた。
痩けた頬にそっと触れる。
暖かい。
それだけが彼が生きている唯一の証だと思えた。
「……お前、いい加減起きろよ……お前の意志を無視したって怒ってるのか……?」
浅草の頬を撫でながら、三田は言葉を続ける。
「怒っていい。責めて罵ってもかまわねぇ。けど、こんな拒絶の仕方ってあるかよ……っ! 浅草……っ!」
三田の手が浅草から離れ、行き場のない思いを表すように強く握り締められる。
ふと。三田の耳が微かな音を拾った。
はっと三田は目を開ける。まさか、と思いながらも三田は浅草の顔を見つめた。
ゆっくりと浅草のまぶたが動き、三田が固唾を呑んで見つめる目の前で、浅草が目を開けた。
もう一度見たいと強く願った明るい茶色の瞳。
「浅草……っ」
ひどく擦れた声で出てきたのは彼の名前だけだった。
浅草の瞳が揺らぎ、やがて三田を見つける。
「み、た……?」
擦れて小さくはあったが、間違いなく浅草の声だった。
三田は何も言えずに、ただただ浅草を見つめる。
不思議そうに浅草が首を傾げた。
「お前、なんで……泣いてる、の?」
伸ばされる浅草の手を握り返し、彼の手ごと引き寄せ自分の額につける。
「何でもねぇ……なんでも、ないんだ……浅草……」
三田に握られている方の浅草の指がぎこちなく動き、慰めるように三田の指を撫でた。
言わなくてはいけないことはたくさんあるはずだった。言いたいこともたくさんあるはずだった。
けれど三田は何も言えずに、ただ浅草の手に握り締め涙を流し続けた。
今だけは何も考えずにこうしていたかった。
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こんな結末もあってもいいんじゃね?という。たまには甘い世界で。
ゲームで何周目かで出てくるフラグといくつか立てると辿り着くサービスEDみたいな。まずはS兄さんとの戦闘時あたりでS兄さんが生き残るフラグ立てて、Eのときも同じフラグ立てて、あと何箇所かフラグ立てて……みたいな。
でも大変なのはこのあとですよね。浅草兄さんを生きる気持ちにさせるように説得して支えて。体力も戻さないとだし。死んだことになっているから平気かもだけど、メトロ皇国の兵士や都営帝国にも見つからないようにしないといけないし。東西たちは見逃してくれるだろうけど、でも戦争犯罪者ってことでどちらからも追われる立場にもなりそうかもとかね。それでも、どこかの国の片隅で山とか森とかで四人でひっそりと暮らせばいいと思います。質素で平凡だけど、それは幸せのひとつと思うの。
こんな結末たまにはあってもいいよね。