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今年もオン・オフともに、白峰奈実と神楽月及び月小箱をよろしくお願い致します。
続きに年賀状、というか、年賀状もどき?みたいな感じでNTのSSを置いておきます。
以下にNTでSS!
【最後と最初】
あと五分ほどで日付が変わるのを東西は確認すると、小さく息を吐いた。
暗い中を、光が切り裂き進んでいく。
車内には深夜にもかかわらず様々な人々がいた。笑顔の人々に、東西は小さく笑みを浮かべる。
年に一度の終夜運行。確かに普段よりも気を使うし、苦労も多い。疲労度も比べ物にならない、と思う。
けれど、自分たちが走っていることで、人々が笑えるというのなら、苦労や疲れなどどうってことないとも思うのだ。
小さく笑みを浮かべながら、見るともなしに外を見ていた東西は、駅に立つ人影を見つけて目を大きく見開く。
この駅にいるはずのない人物。東西はホームに停車すると同時に、一緒にいた車掌に一言声をかけてからホームへと飛び降りた。
「南北!」
ここにいるはずのない、いてはいけない後輩の名前を呼ぶ。
南北は東西を見ると、普段と変わらずに小さく笑みを浮かべていた。
「お前、どうしたんだよ!? 何かあったのか!?」
当然南北だとて終夜運転中だ。今の時間、現場を離れてはいられないだろう。
それが、まったく関係のない東西の駅にいるのだ。何かあったのかと思った。
「ん? 休憩中」
しかし、南北は東西の心配をよそに、実にあっけらかんと言い切った。
「おま……休憩って……」
あまりにも当然だというように言われ、東西は一瞬言葉を失う。
「何言ってんだよ! 馬鹿! この忙しい時間帯に何考えてる!!」
心配したこともあって、思わず怒鳴りつけると、南北は小さく肩を竦めた。
「それはそうだけど。でも、少しくらい平気だよ」
「平気って……!」
「ちゃんとうちの職員にも頼んできたし、うちの職員は優秀だからちょっとくらい僕が抜けても大丈夫」
にっと唇の端を持ち上げて南北が言う言葉に、東西は思わず黙らされてしまう。
「……そ、そりゃ……それはうちも同じだけどよ……」
職員たちの優秀さは、言われなくともわかっている。大きなトラブルや事故がない限り、つきっきりでいなければならないということもない。
けれど、それはそれとして、そう易々と自路線を離れてもいいということにはならない。と、東西は思う。今日は常にはない運行なのだから、特にだ。
「けど……」
「東西」
小言じみた言葉を言おうとしていた東西を、南北がさらっと遮った。
思わず黙らされてしまった東西は、懐中時計をしまう南北の姿を見つめるしかない。
「な……」
彼の名前を呼ぼうとした途端、ふいに腕を引かれた。
突然のことに咄嗟に対処出来ずに、東西は簡単にバランスを崩す。
倒れ掛かる身体を、南北が抱きとめた。
ふっと、頬にぬくもりが触れたかと思った瞬間、唇を暖かなものに塞がれる。
自分の唇を塞いだものが南北のそれを気づき、東西の思考は完全に停止した。
触れるだけだった口づけは、すぐに深いものへと変わっていく。
刺すような寒さの中、東西は身体の芯から熱が燈っていくのを感じていた。
南北を振り解こうとも思わず、逆に東西は南北の腕をぎゅっとつかむ。
どれほどそうしていただろうか。
始まりと同じくらい唐突に唇が離された。
霞むほど間近に、南北の微笑んだ顔がある。
ぼうっと南北の顔を見つめていると、ちゅっと耳朶に口づけられた。
「……っ!」
思わず息を呑む東西の耳元で、柔らかな声で南北が囁く。
「明けましておめでとう、東西。今年もよろしくね」
それから、とふいに南北が口調を変えた。
「去年最後のキスと今年最初のキス、もらったよ」
艶めいた声で囁かれ、一気に東西の顔が真っ赤になった。
「ば、馬鹿野郎……っ!」
叫んだところで、掠れた声と赤い顔ではなんの効果もなく。
東西はどうすることも出来ずに、くすくす笑う南北の肩に顔を埋めた。
抱き締める暖かな腕に、ふいに東西は気づく。
キスもそうならば、言葉を交わしたのも会っていたのも、姿を見たのも。
すべての最後と最初は、南北とだった。
その事実がなんだか嬉しいことのように思え、東西は小さく息を吐く。
それから、南北の耳元で小さく「明けましておめでとう」と囁いた。
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明けましておめでとうございます!
南北はすべて計算ずくです。すべてが東西にとって最後と最初になるようにしくみました。
絶対に年の最後と最初は、東西が見るのも、言葉を交わすのも、自分じゃなきゃ嫌だったわけです。もちろん、「おめでとう」って言うのも。東西の職員たちにも譲りたくなかったわけですね。
南北の独占欲はひどいです。新年早々こんな話ですみません。
今年もしらみねは絶好調のようです。